建築のはなし

高齢化社会2

2017.11.04
高齢化社会2リハビリの時間には先生と色々な話をします。最近よくお話するテーマはリハビリ棟の環境改善についてです。窓際に移った私は外気外交の恩恵を受け、以前に比べ格段に快適に過ごせていますが、通常平均2、3カ月程の入院患者が多いリハビリ棟では、鬱やストレスの症状も頻繁に見受けられるそうです。環境デザインというところでは、イオンウォッシャー、採光フィルム・光ダクトの導入、ハイサイドライト型の建築形態など通風・採光に対してのアプローチを更に強化する事で改善できる点が非常に多くあります。また、65歳以上が4割を占める人口比率から見ると、リハビリ棟における高齢者との共存は今後更に顕著化するテーマになるでしょう。非高齢者患者が高齢患者の世話をする事でインセンティブが受けられる仕組みを作ったり、最適なリハビリの形態や病床のレイアウトなど考えられることは沢山あります。有用な環境や仕組みの有り方は世情により大きく変わっていきますが、そこに対するアプローチはやはりクリエイティブの醍醐味の一つです。写真は色づき始めた木々と秋の空と佐保川。

そうはならない

2017.11.03
そうはならない30歳になる頃、ある建築プロジェクトを担当していた時の事、施主の中にインテリアデザイナーがいらっしゃった。昼光や人工照明のシミュレーションをリアル・アピアランス画像を用いてプレゼンテーションしていたが、”そうはならない!”と一喝された記憶がある。私は何故そうはならないのかを該者の経験上の言葉や理論で語って欲しかったが、彼はその言葉を持っていなかった。私はCGシミュレーションで実際とは異なる最大の要素は画角とアングル(視点の距離)だと思っている。実際の眼は画角が切れる事が無いため、回り込んでくる光や気配を感じ取っている様に思う。そして私達の視点や視野は常に動いているため空間と画はそもそも景色が異なって見える。”そうはならない!”の出来事はふと思い出した記憶ですが、体験や理論を人に伝え共感していくことの”共鳴”という作業はとても重要であることを改めて考えさせてくれた出来事でした。写真は病院の中庭からの秋の鱗雲。

方丈

2017.10.27
方丈病床は四畳半に電動ベット、TV・冷蔵庫付の棚、ロッカー、椅子でもベットでも使える動く机、タスクと非常灯とアンビエントを照明、荷物を運んできたキャリーバック。この広さと仕様で一ヵ月弱ほぼ不自由なく過ごしています。あとは外気外交を取り入れる窓があれば言うことなしです。杉本博司氏”苔のむすまで”の”人にはどれだけの土地がいるか”という項の中で記述されている鴨長明の方丈と同じ広さです。四畳半はそぎ落とされた快適な空間単位かもしれません。写真は病院外の大納言塚にある良い雰囲気の石壁。